『キリスト教倫理』
泉田 昭著(いのちのことば社、3,780円税込)
私なりに美点を挙げるとすれば、「平易」「最新」「日本的」という3つの言葉に集約できそうです。
まず、「平易」です。著者が神学校で教えたキリスト教倫理の講義ノートをベースとしているので、内容は本格的な神学書です。しかし、決して難解さを感じさせず、私自身も読み進むうちに、いつの間にか神学書であることを忘れてしまった程です。教職や専門家に限らず、幅広い方々に自信をもってお勧めできます。
また、「最新」です。科学と医学の目覚しい進歩に伴い、最も倫理的な判断が迫られているのは生命倫理の分野です。著者は「聖書は生命についてどのように啓示しているか」から始め、人工授精、遺伝子操作、クローニングなど近年の倫理的な課題にも向き合い、責任ある指針を示しています。他の分野においても最新の課題を取り上げているのは大きな魅力かと思います。
さらに、「日本的」です。最も文化的な差異が生じやすいのが家族の倫理です。著者は日本家庭独自の課題を指摘しつつ、聖書的で優れた引用を用いて現実的な指針を与えています。これは、日本人の著者だからこその美点として高く評価したいです。
聖書信仰に立つ日本人が、分かりやすい母国語で聖書の倫理を示し、今、私たちが直面する具体的課題に指針を与える書物の出版と言えるでしょう。「普遍的でありながら、現代日本にフィットする倫理学書」として親しんでいただければと願います。
(評・水谷潔=小さないのちを守る会代表)
