『牧師とその家族のメンタルケア』
窪寺俊之ほか共著(いのちのことば社、1,785円税込)
しかし、ここにきて、ようやく日本人の牧会者や神学者から、積み上げられるものが出始めてきた。昨年出版された賀来周一氏の『キリスト教カウンセリングの本質とその役割』(キリスト新聞社)等はその好例で、私は読みながら心踊らせた。
そして本書も、そうした1冊である。内容は、3人の執筆者が、さながら独立したブックレットをそれぞれに著し、合本したような趣で、それぞれに個性が発揮されている。
まず、「I 牧師のメンタルヘルス」では、牧師個人にとどまらず、かなり幅広く、総覧的にメンタルヘルスの諸要因がとりあげられ、解決の方向性が示される。
次に、「II 牧師とその家族へのメンタルケアの理解、対策、ならびに援助システムについて」では、やはり牧会現場でのメンタルヘルスの問題が会話形式で、事例レベルでも扱われる。
最後に、「III メンタルヘルス こころの病と向き合うということ」では、精神科医による疾病の解説が行われ、うつ病、不安障害(神経症)、人格障害、心身症、統合失調症、認知症、発達障害など、実に広範囲のものが扱われている。
どの著者の章も、土台の部分を広く扱っている。今後、こうした論議や研鑽を深める際の土俵や見取り図になったり、前提知識を確認したりといった多様な、しかし礎となる役割を果たすことだろう。次なる期待は、3人の著者が、十分な頁を与えられ、それぞれのテーマを掘り下げて書いてくださることである。
(評・藤掛明=聖学院総合研究所カウンセリングセンター准教授)
