週刊 『クリスチャン新聞』 2010年3月14日号 =5面=掲載

『牧師とその家族のメンタルケア』

窪寺俊之ほか共著(いのちのことば社、1,785円税込)

 私は、牧師やキリスト者のメンタルヘルスやカウンセリングに関する書籍や記事に、不満足を感じることが多かった。それらがピンポイントの経験則であったり、特定の立場による打ち上げ花火のような印象を持つことが多かったからだ。それでは、多くの関係者が互いに論じ合い、積み重ねていけない。そんな苛立ちであった。
 しかし、ここにきて、ようやく日本人の牧会者や神学者から、積み上げられるものが出始めてきた。昨年出版された賀来周一氏の『キリスト教カウンセリングの本質とその役割』(キリスト新聞社)等はその好例で、私は読みながら心踊らせた。
 そして本書も、そうした1冊である。内容は、3人の執筆者が、さながら独立したブックレットをそれぞれに著し、合本したような趣で、それぞれに個性が発揮されている。
 まず、「I 牧師のメンタルヘルス」では、牧師個人にとどまらず、かなり幅広く、総覧的にメンタルヘルスの諸要因がとりあげられ、解決の方向性が示される。
 次に、「II 牧師とその家族へのメンタルケアの理解、対策、ならびに援助システムについて」では、やはり牧会現場でのメンタルヘルスの問題が会話形式で、事例レベルでも扱われる。
 最後に、「III メンタルヘルス こころの病と向き合うということ」では、精神科医による疾病の解説が行われ、うつ病、不安障害(神経症)、人格障害、心身症、統合失調症、認知症、発達障害など、実に広範囲のものが扱われている。
 どの著者の章も、土台の部分を広く扱っている。今後、こうした論議や研鑽を深める際の土俵や見取り図になったり、前提知識を確認したりといった多様な、しかし礎となる役割を果たすことだろう。次なる期待は、3人の著者が、十分な頁を与えられ、それぞれのテーマを掘り下げて書いてくださることである。

(評・藤掛明=聖学院総合研究所カウンセリングセンター准教授)
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